四大奇書とは? -中国 明時代を代表するベストセラー本-

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はじめに

トップ3とかベスト3とか言われると、なんだか気になってくることありません?
私はというと、まったく知らない分野であっても興味本位に調べてみたくなります。そんなわけで、たまたま耳にした「中国 四大奇書」について調べてみました。

そもそも奇書とは?

日本において奇書と聞くと、”奇妙な” “奇抜な” “不思議な”というニュアンスが強いと思います。日本三大奇書でいうと、夢野久作「ドグラ・マグラ」などが有名ですが(日本三大奇書の1つ)、暗号めいて解読不能な「ヴォイニッチ手稿」のようなものも奇書と呼ばれています。前者は内容の奇妙さから、後者は意味が分からない不気味さから奇書とされていますが、それぞれ”奇書”の意味するところに差異があるみたいです。この2冊については知っていたので「中国四大奇書」と聞いたとき私は『解読不能な本か、書いてある内容が奇妙な本のことかな』と思いましたが、「中国四大奇書」の”奇書”が意味するところはまったく違っていました。
ここでの”奇書”は、“世に稀なほど卓越した書物”ということを表しており、要するに”とても素晴らしい本”という意味だったのです。当時の書店がキャッチフレーズとしてつけたものらしいのですが、それに恥じない小説として今日まで名の知れた書物なのです。

中国四大奇書と呼ばれる長編小説

四大奇書はこの4冊です。個別に簡単な解説をしていきたいと思います。

  • 三国志演義 – さんごくしえんぎ
  • 水滸伝 – すいこでん
  • 西遊記 – さいゆうき
  • 金瓶梅 – きんぺいばい

外部リンク: 四大奇書 – Wikipedia

三国志演義

14世紀の明の時代に施耐庵、あるいは羅貫中によって書かれたものです。
後漢末の三国時代、”魏” “呉” “蜀”の争いについて書かれたものですが、あからさまに”蜀”びいきの内容になっています。劉備、関羽、張飛の三義兄弟が、悪の親玉である曹操に立ち向かっていくという、わかりやすい勧善懲悪の体裁をおくとこで物語として明快さを持たせ読者の評価を得たのではないかと思います。
また、よく混同されるのですが「三国志」と「三国志演義」は別の書物になります。「三国志」は歴史書として史実(実際には著者の私情により疑わしい記載あり)が記されているのですが、「三国志演戯」は三国時代を舞台とした講談を基にした小説であり歴史書とは呼べません。物語を盛り上げるために実際には起こっていない出来事などが記されています。とはいえ、”七分の史実に、三分の虚構” と評される通り荒唐無稽な話ではありません。
いまや日本でも漫画やゲームで頻繁に用いられる題材でもあるので説明不要かも。

外部リンク: 三国志演義 – Wikipedia

水滸伝

14世紀の明の時代に施耐庵、あるいは羅貫中によって書かれたものです。
水滸伝とは「水のほとりの物語」という意味。これだけ聞くと、人間と妖精のハートフルストーリーなのかなぁと勘違いしそうですが、実のところは世間から爪はじきにあった 108人の英雄が悪徳官吏に立ち向かい国を救うというお話。(水のほとりとは梁山泊のことです)
基本的に創作であるとされていますが、徽宗期の12世紀に宋江を筆頭にした36人が梁山泊の辺りで反乱を起こした記録があります。そのため、この出来事をもとに物語として仕立て上げたのではないかとされています。
また、当初 36人だった英雄が 108人に増やされたり、反乱軍だけど朝廷に忠義をつくしていたように書き換えたりと、時代が進むことにより編纂された模様。反権力的な傾向があるので、その時々において禁書とされたこともあるようです。
そういえば、昔のゲームで「幻想水滸伝」っていうのがあったなぁ。

外部リンク: 水滸伝 – Wikipedia

西遊記

16世紀の明の時代に大成した(流行した)小説で、宋の時代 10~13世紀には原型があったようです。著者は丘長春、もしくは呉承恩(編纂しただけ?)とされており、古書にありがちな感じではっきりとしていません。
唐僧・三蔵法師が三人のお供である、孫悟空、猪八戒、沙悟浄(三神仙)と一緒に天竺へお経を取りに行くのですが、その道中に待ち受ける様々な苦難に三蔵法師一行が立ち向かっていくという内容です。他の奇書とは違い、三神仙の神通力(魔法みたいな不思議な力)がばんばん飛び交い、どうやって悪者を退治していくのかドキドキしながら読めるのが魅力なんじゃないかなと思います。
また、三蔵法師にはモデルとなった人物がおり、西暦629~645年にインドへ取経の旅を行った玄奘三蔵がその人だと言われています。この史実が後世に伝わり、物語としての要素を加えられて「西遊記」となったようです。
誰の翻訳だったのか覚えてないのですが、小学生の頃に読んだ記憶があります。ハードカバーの上中下巻だったような気がするけど、はっきり覚えてないなぁ。

外部リンク: 西遊記 – Wikipedia

金瓶梅

16世紀の明の時代(万暦年間(1573年 – 1620年)に蘭陵笑笑生によって書かれたものです。この蘭陵笑笑生というのはペンネームで、実際の人物は誰だったのか分かっていないようです。
「金瓶梅」は「水滸伝」のスピンオフ作品であり、第23話から27話までの武松という登場人物のエピソードを膨らませたものになります。主人公は西門慶という人物なのですが「水滸伝」では武松に仇討ちされて死んでしまいます。一方、「金瓶梅」では武松の仇討ちが失敗してしまい、西門慶は生き延びることができました。「金瓶梅」は、その後の西門慶を描いた物語となっています。
簡潔に言えば、西門慶の家業の成功と衰退、色欲生活となってしまうのですが、当時の社会風俗が鮮明に描かれており名著とされています。
こんなに昔からIfのスピンオフ作品があったことに驚きましたが、たかだか数百年で人間の考えることなんて大差ないのかもしれませんね。

外部リンク: 金瓶梅 – Wikipedia

「四大奇書」よりも一般的な「四大名著」?

ここまで「四大奇書」について書いてきましたが、実はそれよりも一般的に知られる「四大名著」と呼ばれる本が存在します。とはいっても、「金瓶梅」の代わりに「紅楼夢(こうろうむ)」という本を加えたものを「四大名著」と呼ぶため、その他の3冊に変わりはありません。
ついでなので、この「紅楼夢」についても少し説明しておきます。

紅楼夢

18世紀中頃の清朝中期に、曹雪芹と高鶚によって書かれたものになります。著者が2人なのは、前半を曹雪芹、後半を高鶚が書いたとされているためです。
王朝に住む大家の栄枯盛衰を描いた物語となるのですが、貴族階級の子息令嬢の心情をつぶさに表現する優れた描写、どこか憐憫を帯びた空気感から読者の心に響く名著とされています。日本の「源氏物語」のように多くのヒロインが登場ことから、”中国の源氏物語”と呼ばれることもあるそうです。

外部リンク: 紅楼夢 – Wikipedia

おわりに

これらの四大奇書は中国でとても有名な作品であり、多くの映画・ドラマの題材となっています。私も興味があるので、時間をみつけて観てみようと思います。(原作読んでからにするか悩ましい)どの国にも優れた小説がありますので、日本の小説だけでなく海外の小説も読んでいきましょ。
では機会があればまた。

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