ペスト医師とは? -中世に流行した黒死病の専門医-

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はじめに

見た目のインパクトって大事だよなぁと思うのです。よく第一印象が大事だとはいいますが、身だしなみがしっかりしている人はよい印象を持ちますし、その逆もしかり。人を見かけで判断するなというのは、人を見かけで判断するだけの経験や能力がない場合に当てはまる言葉で、実際のところは多くのことが判断できるんじゃないかなぁ、と個人的には思っています。

そんな感じで、見た目という一点において私に強烈な印象を残したペスト医師について調べてみました。

そもそもペスト(黒死病)とは?

本筋ではないので簡単しましょう。
ペストとは感染症の一種です。歴史上で幾度も世界的な大流行をおこした人類の天敵であり、感染後の症状によって病型が変わりますが致死率は概ね30~90%(未治療時)といわれています。ある病型では皮膚が壊死してしまい、黒い痣が現れるため黒死病とも呼ばれています。
14世紀に起こったパンデミック(世界的流行)では、全人口が22%減少したという凶悪な感染症です。いまでも世界中で感染する人々がいる一方で、効果的な感染予防策がなされているため以前のような爆発的な患者増加は防がれているようです。

ペスト医師の風貌

そんな恐ろしいペストの専門医が”ペスト医師”というわけなのです。
とにもかくにも、まずはこれを見ていただきたい。

ペスト医師の服装https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=15677032

スチームパンク作品に出てくる謎の悪役の風貌。医者でありながらその不気味な出で立ちのため、私はわけもなく恐ろしく感じてしまいます。その特徴的な姿は、下記の服装的な特徴によるものです。

  • ペストマスク
  • 革のガウン
  • つば広の帽子
  • 木の杖

彼らの身に着けている装具にはしっかりと意味があります。
それらを1つずつ説明していきたいと思います。

ペストマスク

概ねこいつが犯人です。
顔全体を覆うくちばし状のマスクに丸いアイピース。ペストマスクに限った話ではありませんが、宇宙服やガスマスクなどの、表情が読み取れないものを身に着けると怖さがぐっと増します。どこかカラスの擬人化にも思えてくるのですが、このマスクの形にも理由があります。

14世紀頃の欧州では”瘴気論”と呼ばれる考えがありました。ざっくり言うと、悪い病気は悪い空気(瘴気)が原因であるというものです。それ以前までの悪魔やら呪いといったものからは随分と進歩しているのですが、まだウィルスの存在など誰も知らなかった時代のことです。
そのため、ペスト患者から放たれる瘴気を吸わないように、くちばし状のマスクの中に様々な香草を詰めていたのです。

マスクの中身

  • アンバーグリス
  • パームミント
  • ショウノウ
  • クローブ
  • アヘンチンキ
  • 没薬
  • パラの花びら
  • エゴノキ

これらの香草は瘴気を中和すると考えられており、藁に関してはフィルターの役目として入れられていました。つまり、ペスト医師はフローラルな香りの中で仕事をしていたということ、か?

また、ペストの感染経路として患者の視線も有力視されていたようで、マスクに赤いアイピースをはめることで直接患者と視線を合わせないようにしていました。

革のガウン

もしくは蝋を塗った厚布のガウンです。
これは外からの瘴気を遮り、患者との接触をさけるためです。重たいだろうし通気性が皆無なので夏場は大変だったろうな。

つば広の帽子

とにかく瘴気を体に当てないことを考えて、帽子も着用していました。
それ以外にもズボンの裾はブーツの中に入れるなど、肌を外気にさらすことを極力避けていたようです。

木の杖

患者に触れなくても診察できるように、木の杖を使用していました。それでちゃんとした診察ができたのか? と不安にもなりますが、自身が感染しては他の患者を診れなくなってしまいますし、致し方なしといった感じでしょうか。木の杖のほかに、革製の手袋もしていたようです。

ペスト医師の仕事

ここまでペスト医師の風貌だけ説明してきましたが、彼らの仕事についても少し触れておきます。ペスト医師の身分は公僕(公務員)であり、かなり優遇された地位であったようです。14世紀の欧州では死者の解剖がご法度だったのですが、感染原因の究明のためペスト医師には許されていました。患者の世話や死者の数の記録を行う傍ら、彼らは患者の遺言書を代筆していたようです。
彼らが行った治療は、残念ながら今の医学の観点からすれば誤りであることが多かったようです。そのため、彼らの仕事が感染を抑える効果があったとは言いづらいとのことです。さらに、命の危険を伴う仕事ですからなり手も少なく、一般的な医者として生計が建てられない者、名声の欲しい若い医者などが就くことも多かったようです。また、ペスト患者と接していることから、彼ら自身も隔離対象とされる場合もありました。
現在の知見から察するに、当人の熱意のほどは分かりませんが有意義な職種ではなかったのではないかと残念ながら感じてしまいます。

外部リンク: ペスト医師 – Wikipedia

意外にもこの人もペスト医師だった?

そんなペスト医師ですが、意外にもこんな人たちもペスト医師だったようです。
私も知って驚いたのですが、イメージと大分違う歴史の偉人達です。

ミシェル・ノストラダムス

日本で一時期騒がれていた”ノストラダムスの大予言”で有名な人物です。
私は占星術師としてのイメージが強かったのですが、フランスで医者をしていたこともあったようで、その際にペスト医師として働いていたみたいです。余談ですが、なんで日本であんなに”大予言”が取り上げられたのでしょう? まあ、不安を煽るとみんな喰いつくからね。

外部リンク: ノストラダムス – Wikipedia

パラケルスス

錬金術師のイメージが強く、とくに”賢者の石”を造ろうとした人物という認識でした。しかし、彼も医学者や科学者の側面を併せ持っています。時代を遡ると、学問として神学的なものと科学的なものがごちゃごちゃになっているなと感じることがあるのですが、この人もそのケースなのかもしれません。とはいえ、これも今の科学があるから言えることなので、当時の人たちにとってその垣根はあまりいみがなかったのかも知れません。

外部リンク: パラケルスス – Wikipedia

終わりに

そんなわけで、ペスト医師について調べてみました。
奇抜な服装の裏には確固とした理由があったのです。その根拠が誤りであったとしても、このスタイルは一種の機能美といってもよいのかもしれません。
それでは、機会があったらまた。

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